Notionでチームの情報アクセスを効率化するカスタムダッシュボード設計・運用術
はじめに:Notion内の「情報迷子」を解消するために
チームでNotionを利用していると、ページやデータベースが増えるにつれて「どこに何の情報があるか分からない」「目的の情報にたどり着くのに時間がかかる」といった、いわゆる「情報迷子」の状態に陥ることが少なくありません。これは、情報共有を効率化するために導入したNotionが、かえって業務のボトルネックになってしまう状況です。
このような課題を解決し、チームの情報アクセスを劇的に効率化するためには、カスタムダッシュボードの構築が有効です。本記事では、Notionでチームの情報集約とアクセス効率化を実現するカスタムダッシュボードの設計から運用までの具体的なステップを解説します。
Notionカスタムダッシュボードとは何か、そのメリット
Notionのカスタムダッシュボードとは、チームが必要とする情報を一つのページに集約し、迅速にアクセスできるように設計されたページです。これは、個々のメンバーが頻繁に参照する情報や、チーム全体の状況を把握するために必要な情報などを、リンクやリンクドデータベース、テキストなどで配置して構成します。
カスタムダッシュボードを導入することには、以下のようなメリットがあります。
- 情報アクセス速度の向上: 必要な情報へのショートカットが集まっているため、ページを階層的に辿る手間が省けます。
- 情報共有の効率化: チーム全体で共通のアクセスポイントを持つことで、情報共有がスムーズになります。
- 現状把握の促進: リンクドデータベースなどを活用することで、プロジェクトの進捗やタスク状況などを一覧で把握しやすくなります。
- 共通認識の醸成: チームの目標や重要な連絡事項などを常に目につく場所に置くことで、チーム全体で同じ情報を見ているという共通認識が生まれます。
カスタムダッシュボードの設計思想
効果的なカスタムダッシュボードを構築するためには、まずその設計思想を明確にする必要があります。以下の点を考慮して設計を進めます。
1. ダッシュボードの目的を定義する
どのような目的でダッシュボードを利用するのかを明確にします。例えば、「プロジェクトの進捗状況をチームで共有する」「日々のタスク管理を効率化する」「チーム内の主要ドキュメントへのアクセスポイントとする」など、具体的な目的を設定します。目的が曖昧なまま構築すると、情報が羅列されただけの使いにくいページになりがちです。
2. ターゲットユーザーを特定する
誰がそのダッシュボードを利用するのか(例: チームメンバー全員、特定のプロジェクトメンバーのみ、マネージャー層など)を明確にします。ユーザーによって必要とする情報や表示形式が異なるため、ターゲットユーザーに合わせた内容とレイアウトを検討します。
3. 含めるべき情報を洗い出す
定義した目的とターゲットユーザーに基づき、ダッシュボードに含めるべき情報を具体的にリストアップします。 例えば、Webディレクターチームのプロジェクト管理向けダッシュボードであれば、以下のような情報が考えられます。
- 現在進行中の主要プロジェクトリスト
- 自分が担当しているタスクリスト(期限が近いもの、進行中のものなど)
- 最近更新された議事録へのリンク
- 頻繁に参照する仕様書やガイドラインなどのドキュメントハブ
- チーム共有のカレンダー(ミーティング、リリース日など)
- 重要な連絡事項やニュース
- チームの目標(OKRやKPIなど)
4. レイアウトと構成を検討する
洗い出した情報をどのように配置するか、レイアウトを検討します。最も重要な情報や頻繁に参照する情報はページの目立つ位置や上部に配置します。関連性の高い情報は近くにまとめたり、カラム分けを活用して整理したりします。
Notionでの具体的なカスタムダッシュボード構築手順
設計思想が固まったら、Notion上で実際に構築を開始します。
1. 新規ページの作成と基本設定
チームの共有スペースに、新しいページを作成します。ページタイトルは分かりやすいもの(例: 「[チーム名] チームダッシュボード」「プロジェクト管理ダッシュボード」など)とし、アイコンやカバー画像を設定して視覚的に識別しやすくします。
2. レイアウトの構築(カラム分けなど)
/column
コマンドを使用して、ページを複数のカラムに分割します。これにより、異なる種類の情報を並行して表示でき、視覚的な整理と情報密度の向上が図れます。例えば、左側にタスクリスト、右側にプロジェクトリストやカレンダーといった配置が考えられます。
3. リンクドデータベースの配置と設定
カスタムダッシュボードの核となるのが、既存のデータベースを埋め込む「リンクドデータベース」です。/linked database
コマンドを使用し、ダッシュボードに表示したいデータベース(例: タスクデータベース、プロジェクトデータベース、議事録データベースなど)を選択します。
リンクドデータベースを配置したら、目的の情報のみを表示するための「フィルター」「ソート」「ビュー」設定を行います。
- フィルター: 「担当者が自分」「ステータスが進行中」「期限が今週」など、特定の条件に合致するアイテムのみを表示します。これにより、ユーザーが必要とする情報(例: 自分のタスク)に絞り込むことができます。
- ソート: 表示するアイテムの並び順を設定します。例えば、タスクリストであれば「期限順」「優先度順」でソートすると、対応すべきタスクが分かりやすくなります。
- ビュー: データベースの表示形式(テーブル、ボード、カレンダー、ギャラリー、リストなど)を選択します。目的に応じて最適なビューを選択し、必要であれば複数のビューを作成して切り替えられるようにします(例: タスクリストを「ボードビュー」と「テーブルビュー」の両方で表示)。
これらの設定を組み合わせることで、元となる一つのデータベースから、目的に応じた様々な情報リストをダッシュボード上に表示させることが可能になります。
4. その他の情報の配置
リンクドデータベース以外にも、必要に応じて以下のブロックを活用して情報を配置します。
- ページリンク: 頻繁に参照する重要なページ(例: チームのオンボーディング資料、給与規定、外部ツールのマニュアルなど)へのリンクを設置します。
- テキストブロック: チームのビジョン、週間の目標、今日の重要な連絡事項、よくある質問(FAQ)などを記載します。Markdown形式で書式設定(太字、箇条書きなど)を行うと、読みやすくなります。
- 見出しブロック: セクションごとに見出し(H2, H3など)を設定し、ダッシュボード全体の構造を明確にします。
- 区切り線ブロック: 異なる情報を視覚的に区切るために使用します。
- 画像/Webブックマーク/埋め込みブロック: チームロゴ、関連するウェブサイトへのリンク、MiroボードやFigmaファイルなどの外部コンテンツの埋め込みを行います。
5. 目次の設置
ダッシュボードが長くなり、スクロールが必要になる場合は、ページの先頭に目次ブロック/table of contents
を設置すると、目的のセクションへ素早くジャンプできるようになり便利です。
チームでのダッシュボード運用上のポイント
カスタムダッシュボードは一度作ったら終わりではなく、継続的にチームで活用していくための運用が重要です。
- チームへの周知徹底: ダッシュボードの存在と利用方法をチーム全体に周知し、日々の業務で参照する習慣をつけます。朝会でダッシュボードを見ながら進捗確認するなど、運用ルールに組み込むことも有効です。
- 定期的な見直しと更新: チームの状況やワークフローの変化に合わせて、ダッシュボードの内容やレイアウトを定期的に見直します。不要になった情報は削除し、新しく必要な情報を追加するなど、常に最新で使いやすい状態を保ちます。
- フィードバックの収集: 実際にダッシュボードを利用しているチームメンバーからフィードバックを収集し、改善点があれば反映させます。「この情報も載せてほしい」「この部分の表示が見にくい」といった意見は、ダッシュボードをより実用的なものにするために役立ちます。
- 役割や目的に応じた複数ダッシュボード: チーム全体向けのダッシュボードと、特定のプロジェクトや役割(例: デザイナー、エンジニアなど)に特化したダッシュボードを分けて作成することも検討します。
- モバイルでの表示確認: チームメンバーがスマートフォンやタブレットでNotionを利用する場合、モバイル環境での表示崩れがないか確認し、必要に応じてレイアウトを調整します。
テンプレートと外部連携による応用
Notionのギャラリーには様々な目的のテンプレートが公開されており、カスタムダッシュボード構築の参考になります。既存のテンプレートをベースに、自チームに合わせてカスタマイズするのも一つの方法です。
また、ZapierやMake (Integromat) といった連携ツールを活用することで、Notionダッシュボードをさらに高機能にできます。例えば、Slackの特定のチャンネルへの投稿をNotionデータベースに自動で記録し、それをダッシュボードに表示するといったワークフローを構築すれば、情報集約の手間を削減できます。Notion APIを利用すれば、より高度なカスタマイズや外部サービスとの連携も可能です。
まとめ
Notionでチームの情報迷子を解消し、効率的な情報アクセスを実現するためには、カスタムダッシュボードの設計と構築が非常に有効です。本記事で解説した設計思想に基づき、リンクドデータベースの活用や適切なブロック配置を行うことで、チームが必要とする情報を一箇所に集約した使いやすいダッシュボードを構築できます。
ダッシュボードは継続的な運用と改善が鍵となります。チームメンバーからのフィードバックを取り入れつつ、定期的に見直しを行うことで、Notionをチームの情報ハブとして最大限に活用し、日々の業務効率化を促進できるでしょう。ぜひ本記事を参考に、自チームに最適なカスタムダッシュボード構築に挑戦してみてください。