Notionで議事録をアクションに繋げる:決定事項・タスク管理と追跡の効率化
議事録管理における課題
チームで情報共有や意思決定を行う上で、議事録は重要な記録となります。しかし、単に議事録を作成するだけでは、会議で決定した重要な事項や、そこで生まれたタスクが議事録の本文に埋もれてしまい、後から探し出すのが困難になることがあります。その結果、タスクの抜け漏れが発生したり、担当者が曖昧になったりといった問題が生じ、プロジェクトの遅延や手戻りの原因となるケースが少なくありません。
これらの課題は、議事録の作成プロセスと、そこから派生するアクションアイテム(決定事項やタスク)の管理プロセスが分断されていることによって引き起こされやすいと考えられます。会議で合意した内容が単なるテキストとして記録されるだけでなく、具体的な「誰が、何を、いつまでに行うか」というタスクに落とし込まれ、適切に追跡される仕組みが必要です。
Notionを活用した課題解決のアプローチ
Notionを活用することで、議事録の記録と、それに紐づく決定事項やタスクの管理を効率的に連携させることができます。このアプローチの鍵となるのは、議事録とタスクをそれぞれ独立したデータベースで管理し、それらを「リレーション」プロパティで関連付けることです。これにより、議事録ページから直接関連タスクを確認したり、タスクから関連議事録を参照したりすることが可能になります。
この連携ワークフローを構築することで、会議の決定事項がアクションアイテムとして明確になり、担当者や期限と共に可視化されます。さらに、タスクの進捗をNotion上で一元管理することで、議事録の内容が「決めただけ」で終わらず、確実に実行に移されているかをチーム全体で追跡することが可能になります。
データベースの設計
このワークフローを構築するために、以下の2つの主要なデータベースを作成または既存のデータベースにプロパティを追加することを推奨します。
1. 議事録データベース
会議の記録を保存するためのデータベースです。主要なプロパティとして以下を設定します。
- 名前 (タイトル): 会議名や件名(例: 「〇〇プロジェクト 定例会 (2023/10/27)」)
- 開催日時 (日付): 会議が行われた日時。時間を含める設定が可能です。
- 参加者 (人物): 会議の参加者をNotionのユーザーとして登録します。
- 関連プロジェクト (リレーション): 関連するプロジェクトを管理しているプロジェクトデータベースへのリンクです。これにより、特定のプロジェクトに関連する議事録を簡単に絞り込めます。(任意)
- 決定事項 (リッチテキスト): 会議で合意された重要な決定事項を箇条書きなどで簡潔に記録します。議事録本文とは別にまとめることで、後から決定事項だけを確認しやすくなります。
- 関連タスク (リレーション): 後述するタスクデータベースへのリンクです。このリレーションにより、議事録ページからその会議で生まれたタスクを直接参照できるようになります。
2. タスクデータベース
チームのタスク全般を管理するためのデータベースです。既に存在する場合は、そこに新しいプロパティを追加します。タスク管理に特化したデータベースがない場合は新規に作成します。
- 名前 (タイトル): タスクの内容を具体的に記述します。(例: 「議事録システムのデータベース設計を完了させる」)
- 担当者 (人物): タスクの担当者をNotionのユーザーとして登録します。
- 期限 (日付): タスクの締め切りを設定します。カレンダービューなどで期日管理が容易になります。
- ステータス (セレクトまたはマルチセレクト): タスクの進捗状況を示すプロパティです(例: 「未着手」「進行中」「レビュー依頼中」「完了」「保留」「中止」など)。チームのワークフローに合わせてカスタマイズします。
- 関連議事録 (リレーション): 上記の議事録データベースへのリンクです。どの会議でこのタスクが生まれたかを示します。このプロパティを設定すると、議事録データベース側の「関連タスク」プロパティにも自動的にこのタスクが紐づきます。
- 関連プロジェクト (リレーション): 関連するプロジェクトデータベースへのリンクです。タスクをプロジェクトごとに分類・管理するのに役立ちます。(任意)
ワークフローの構築手順
データベースが準備できたら、具体的な運用ワークフローを構築し、チームで共有・実践します。
- 議事録ページの作成: 会議開始前に、議事録データベースに新しいページを作成します。議事録データベースにテンプレートを設定しておくと、ページの作成と同時に必要なプロパティがあらかじめ設定された状態になります。テンプレートには、後述する関連タスクを表示するインラインデータベースを含めておくと便利です。
- 議事録の記録: 会議中に、議事録本文に議論の内容を記述します。重要な決定事項については、議事録本文の他に、議事録DBの「決定事項」リッチテキストプロパティにも別途簡潔にまとめます。これにより、後から決定事項のみを確認しやすくなります。
- タスクの登録と関連付け: 会議中または会議直後に、議事録から生まれた具体的なアクションアイテムをタスクデータベースに新規作成します。タスクを作成する際、「関連議事録」プロパティで、先ほど作成した該当議事録ページを必ず選択し、関連付けを行います。 より効率的な方法として、議事録ページ内の「関連タスク」リレーションプロパティから「新規ページ」ボタンをクリックしてタスクを作成することも可能です。この方法であれば、自動的に関連付けが行われます。また、議事録テンプレートにあらかじめタスクデータベースのインラインビューを埋め込んでおき、そこで直接タスクを追加・入力していく運用も有効です。
- 決定事項・タスクの確認と追跡: 議事録ページを開けば、「関連タスク」リレーションプロパティや、テンプレートに埋め込んだ関連タスクのインラインデータベースを通して、その会議で生まれたタスク一覧とそれぞれのステータスをすぐに確認できます。 タスクデータベース側では、「関連議事録」プロパティでグループ化したり、特定の議事録でフィルタリングしたりすることで、特定の会議に関連する未完了タスクだけをリストアップすることが容易になります。担当者や期限でタスクをフィルタリング・ソートすることで、チームメンバーは自身の担当タスクや期日が近いタスクを効率的に確認できます。タスクのステータスを「完了」に更新していくことで、決定事項がアクションとして適切に進行しているかを追跡します。
応用的な活用方法
- ロールアッププロパティによる集計: 議事録データベースにロールアッププロパティを追加し、「関連タスク」リレーションプロパティを介してタスクデータベースの「ステータス」プロパティを参照します。これにより、その議事録から生まれたタスクのうち「完了」の数や、「未完了」のタスクのリストなどを自動的に集計・表示させることができます。これにより、各会議で決まったことがどれだけ実行されたか、といった「決定事項の消化率」のようなものを視覚的に把握できます。
- 議事録テンプレートの最適化: 議事録データベースにテンプレートを設定する際に、ページ本文にタスクデータベースのインラインビューを埋め込みます。このインラインビューには、「関連議事録がこのテンプレートが適用されるページであるもの」というフィルタをあらかじめ設定しておきます。これにより、新しい議事録ページを作成するたびに、そのページに紐づくタスクをすぐに確認・追加できるエリアが自動的に用意され、タスクの登録漏れを防ぎやすくなります。
- データベースビューの活用: タスクデータベースでは、テーブルビューで一覧性を高めたり、ボードビューでステータスごとの進捗を可視化したり、カレンダービューで期限を確認したりと、複数のビューを作成・活用することで、様々な角度からタスクの状況を把握できます。
- 通知とオートメーション(Notion自動化機能): Notionの自動化機能(有料プラン)を活用すると、例えば関連タスクのステータスが「完了」になったら議事録ページの特定のプロパティ(例: 「すべてのアクションが完了」チェックボックス)を自動でオンにしたり、タスクに期限が設定されたら担当者に通知を送ったりといった自動化を設定し、追跡管理をさらに効率化できます。ZapierやMakeなどの外部ツールとNotion APIを連携させることで、さらに高度な自動化も可能です。
チームでの運用を定着させるために
このワークフローをチームで効果的に運用し、定着させるためには、以下の点を意識することが重要です。
- ルールの共有と浸透: 議事録とタスクの関連付け方法、タスクの登録ルール(いつ、誰が、どのようにタスクを登録するか)、タスクのステータス更新ルールなどをチーム内で明確に共有し、全員がそのルールに沿って運用することを徹底します。
- テンプレートの利用促進: 議事録テンプレートの利用を推奨し、可能な場合は必須とすることで、情報の登録漏れや形式のばらつきを防ぎ、誰でも迷わずワークフローに乗れるようにします。
- 定期的な確認: チームの定例会などで、タスクデータベースのビューを用いて、未完了のタスクや特定の議事録から生まれたタスクの進捗を定期的に確認する時間を設けます。これにより、タスクの遅延やブロックを早期に発見し、必要な対策を講じることができます。
- フィードバックと改善: 実際に運用してみて見えてくる課題や改善点について、チームで定期的に話し合い、データベース構造やワークフローを継続的に見直していく姿勢が重要です。
まとめ
議事録とタスク管理をNotionのリレーション機能を活用して連携させることは、会議で決定した重要な事項やアクションアイテムを確実に追跡し、タスクの抜け漏れを防ぐ上で非常に効果的です。単に議事録を記録するだけでなく、それを具体的なアクションに繋げるワークフローを構築することで、チームの生産性向上に大きく貢献します。
今回ご紹介したデータベース設計とワークフローは基本的なフレームワークです。チームの特定のニーズや既存の運用に合わせて、プロパティの種類や数は自由に調整し、最適な形にカスタマイズを進めることが可能です。Notionの柔軟性を最大限に活かし、チームの会議後プロセスを効率化し、意思決定を確実に実行に移す運用をぜひ実践してみてください。