Notionデータベースで実現する複数プロジェクトの横断管理と効率化
複数プロジェクト管理における課題
Webディレクターやプロジェクトマネージャーは、多くの場合、同時に複数のプロジェクトを推進する必要があります。それぞれのプロジェクトには独自の目標、期限、タスク、関係者が存在します。情報がプロジェクトごとに分散している場合、全体像の把握が困難になり、以下のような課題が生じがちです。
- 全体の進捗が見えにくい: 個別のプロジェクトは管理できていても、ポートフォリオ全体の状況やリスクを俯瞰できない。
- リソース配分の最適化が難しい: チームメンバーが複数のプロジェクトに関わる場合、誰がどのプロジェクトにどれだけ関わっているか、ボトルネックはどこかを把握しにくい。
- タスクの重複や漏れ: プロジェクトを横断する共通タスクや、特定の担当者に紐づくタスクの管理が複雑になる。
- 情報共有の非効率化: プロジェクトを跨いだ情報共有やナレッジの再利用が進みにくい。
これらの課題は、チーム全体の生産性低下やプロジェクトの遅延につながる可能性があります。Notionのデータベース機能を応用することで、これらの課題に対する効果的な解決策を構築できます。
Notionによる複数プロジェクト横断管理の基本構造
Notionで複数プロジェクトを横断的に管理するには、情報を統合し、異なる角度から参照できるデータベース構造を設計することが鍵となります。中心となるのは、以下のデータベースです。
- プロジェクトデータベース: 個々のプロジェクト情報を管理します。
- タスクデータベース: プロジェクトに紐づく全てのタスクを管理します。
- メンバーデータベース: チームメンバーの情報を管理します(オプション)。
これらのデータベースを「リレーション」機能で関連付けることで、プロジェクトとタスク、タスクと担当者といった紐付けが可能になります。さらに「ロールアップ」機能を使えば、関連付けられたデータベースから情報を集計し、プロジェクトデータベース上でタスクの完了率や合計時間などを表示できるようになります。
データベース設計とリレーションの設定
1. プロジェクトデータベースの設計
プロジェクトデータベースには、以下のプロパティを含めると便利です。
- プロジェクト名: プロジェクトの正式名称(タイトルプロパティ)
- ステータス: 例: 企画中, 進行中, 完了, 中断 (SelectまたはStatusプロパティ)
- 開始日/終了日: プロジェクト全体の期間 (Dateプロパティ)
- 担当者/リーダー: プロジェクトの主要担当者 (Personプロパティ)
- クライアント/関連部署: (Textプロパティまたは別のデータベースとのリレーション)
- 予算: (Numberプロパティ)
- 関連タスク: タスクデータベースへのリレーションプロパティ
2. タスクデータベースの設計
タスクデータベースには、全てのタスクを集約します。以下のプロパティを設定します。
- タスク名: タスクの内容(タイトルプロパティ)
- ステータス: 例: 未着手, 進行中, レビュー待ち, 完了, 保留 (SelectまたはStatusプロパティ)
- 担当者: タスクの担当者 (Personプロパティ)
- 期限: タスクの期日 (Dateプロパティ)
- 見積時間/実績時間: タスクにかかる時間 (Numberプロパティ)
- 優先度: 例: 高, 中, 低 (Selectプロパティ)
- 関連プロジェクト: プロジェクトデータベースへのリレーションプロパティ
3. リレーションの設定
プロジェクトデータベースとタスクデータベースの間でリレーションを設定します。
- プロジェクトデータベースに新しいプロパティを作成します。プロパティタイプとして「Relation」を選択します。
- リレーション先として「タスクデータベース」を選択します。
- 「Sync existing properties」が表示されたら、「Create relation in Tasks」を選択し、タスクデータベース側にも自動的に対応するリレーションプロパティが作成されるようにします。プロパティ名は「関連プロジェクト」などとします。
これで、各タスクは関連するプロジェクトに紐付けられ、各プロジェクトはそのプロジェクトに含まれる全てのタスクを参照できるようになります。
横断管理を実現するビューの活用
単一のタスクデータベースに全てのタスクが集約されているため、様々な「ビュー」を作成することで、プロジェクトを横断した情報を柔軟に表示できます。
1. 全タスクの横断ビュー
タスクデータベース上で、ボードビュー、テーブルビュー、カレンダービューなどを複数作成します。
- ボードビュー: ステータス(未着手、進行中など)でグループ化することで、全プロジェクトのタスクが現在のどのフェーズにあるかを一覧できます。担当者でグループ化すれば、各担当者の抱えるタスク量を把握できます。
- テーブルビュー: フィルタ機能を使って特定の条件(例: 期日が迫っているタスク、特定のプロジェクトのタスク)で絞り込み表示します。プロパティ表示をカスタマイズすれば、必要な情報だけを表示できます。
- カレンダービュー: 期限プロパティをキーに設定することで、全プロジェクトのタスクの期日をカレンダー形式で視覚的に確認できます。
2. プロジェクトごとのサマリービュー(ロールアップ)
プロジェクトデータベース上で、関連タスクの情報を集計表示するためにロールアッププロパティを使用します。
- プロジェクトデータベースに新しいプロパティを作成し、タイプを「Rollup」に設定します。
- 「Relation」として、先に設定した「関連タスク」リレーションを選択します。
- 「Property」として、タスクデータベースから集計したいプロパティ(例: ステータス)を選択します。
- 「Calculate」として、集計方法(例: グループ数 - ステータスごとのタスク数、完了ステータスの割合)を選択します。
これにより、プロジェクトページを開くことなく、プロジェクトデータベースの一覧画面で各プロジェクトのタスク完了率などを確認できるようになります。
ワークフローの構築と運用ポイント
プロジェクト開始時のワークフロー
- 新しいプロジェクトが開始する際、プロジェクトデータベースにエントリを作成します。
- そのプロジェクトに紐づく初期タスクをタスクデータベースに作成し、関連プロジェクトとして新規プロジェクトを選択します。
- 定型的なセットアップタスクがある場合は、テンプレートボタンやページテンプレートを活用してタスクセットを効率的に生成します。
日々のタスク管理
- チームメンバーは、タスクデータベースの自分に割り当てられたタスク一覧(担当者でフィルタリングしたビュー)を確認し、作業を進めます。
- タスクのステータスは作業進捗に合わせて更新します。ステータス変更をトリガーとしたオートメーションで関連担当者に通知を送る設定も有効です。
定期的なレビュー
- 週次のプロジェクトレビューやチームミーティングでは、プロジェクトデータベースのロールアップ情報や、タスクデータベースの横断ビュー(ボード、カレンダー)を活用して全体の進捗状況を確認します。
- 遅延しているタスクやリソース配分の課題がないかを早期に発見し、対策を検討します。
運用上のポイント
- 入力ルールの統一: プロパティの入力ルール(ステータスの定義、期限の設定方法など)をチーム内で統一し、情報の正確性を保ちます。
- ビューの整備: チームメンバーが必要な情報に素早くアクセスできるよう、目的に応じたビューを事前に作成し、分かりやすい名前をつけます。
- Notion連携の活用: Googleカレンダー連携などを活用し、タスクの期限をカレンダーに表示することで、抜け漏れを防ぎます。
- 定期的なメンテナンス: データベースが肥大化したり、使われなくなったプロパティやビューがないか、定期的に見直しを行います。
まとめ
Notionのデータベース機能、特にリレーションとロールアップ、そして多様なビューを組み合わせることで、複数のプロジェクトやそこに紐づくタスク、メンバーといった情報を一元管理し、様々な角度から状況を把握することが可能になります。これにより、プロジェクト間の情報分断を防ぎ、リソースの可視化、タスクの抜け漏れ防止、全体進捗の把握精度向上といったメリットが得られ、チーム全体の生産性向上に貢献します。
今回ご紹介した構造は基本的なものですが、チームの特性や業務内容に合わせてデータベースやプロパティ、ビューをカスタマイズすることで、より自社のワークフローに最適化された複数プロジェクト管理システムをNotion上に構築できるでしょう。Notionを活用した効率的なプロジェクト推進に取り組んでいただければ幸いです。