Notionデータベースでチーム目標(OKR/KPI)を可視化・追跡し効率化する方法
はじめに
チームでの業務遂行において、明確な目標を設定し、その進捗を適切に管理・共有することは非常に重要です。しかし、目標情報が様々な場所に散在したり、現在の進捗状況が不透明になったりすることで、チーム全体の方向性を見失ったり、効果的なアクションが遅れたりする課題に直面することも少なくありません。
Notionは、データベース機能を活用することで、このようなチーム目標の管理プロセスを効率化するための強力なプラットフォームとなります。目標の一元管理、リアルタイムでの進捗共有、関連情報との連携を通じて、チーム全体の目標達成能力を高めることが期待できます。
この記事では、Notionデータベースを使用してチームのOKR(Objectives and Key Results)やKPI(Key Performance Indicators)といった目標を効果的に可視化し、追跡することで、チームのワークフローを効率化する方法について具体的なデータベース設計例や運用ポイントを交えて解説します。
Notionで目標管理するメリット
Notionをチーム目標管理に活用することには、以下のようなメリットがあります。
- 情報の一元化: 目標、担当者、期間、進捗、関連資料などを一つのデータベースで管理できます。
- リアルタイムな共有: チームメンバーは常に最新の目標情報と進捗状況を確認できます。
- 進捗の可視化: 数式やロールアップ、多様なビュー機能を使って、目標の達成度や全体像を視覚的に把握できます。
- 関連情報との連携: プロジェクトやタスクのデータベースと連携させることで、目標達成に向けた具体的な活動と紐づけて管理できます。
- 柔軟なカスタマイズ: チームの運用に合わせてデータベースの構造や表示方法を自由に設計できます。
目標管理データベースの設計
チーム目標を管理するためのNotionデータベースを設計する際には、以下の要素を含めることが有効です。ここでは、OKRとKPIの両方に対応可能な汎用的な構造を検討します。
データベース名
「チーム目標管理」「OKR/KPIトラッカー」など、チーム内で認識しやすい名称を設定します。
プロパティの設計例
目標管理に必要な情報を格納するためのプロパティを設定します。
- 名前 (Title): 目標の名前やタイトル(例: WebサイトのCVRを10%向上させる)
- 種別 (Select): 目標の種類(例: OKR, KPI)。必要に応じて「部門目標」「個人目標」などを追加します。
- 担当者 (Person): その目標の主担当者または担当チーム。
- 期間 (Date): 目標を追跡する期間。四半期ごと、年度ごとなど設定します。
- ステータス (Select/Status): 目標の現在の状態(例: 未着手, 進行中, 達成, 保留, 中止)。
- 定義/測定方法 (Text/URL): その目標や指標が何を意味し、どのように測定するかの詳細。参考資料へのリンクなども格納できます。
- 目標値 (Number): KPIなどの数値目標の基準値。
- 現在値 (Number): KPIなどの現在の数値。定期的に更新します。
- 達成率 (Formula): 目標値に対する現在値の達成率を自動計算します。KPIの場合は
(prop("現在値") / prop("目標値"))
といった数式で算出できます。OKRの場合は、関連するKey Resultの進捗を集計するためにロールアップを用いることが多いです。 - 親目標 (Relation): OKRの場合、Key Resultが紐づくObjectiveを設定するためのリレーションプロパティ。「Objectives」という別のデータベースまたは同じデータベース内のObjective項目に紐づけます。
- Key Results (Relation): OKRの場合、Objectiveに紐づくKey Resultを設定するためのリレーションプロパティ。「Key Results」という別のデータベースまたは同じデータベース内のKey Result項目に紐づけます。
- OKR進捗率 (Rollup): Objectiveの場合、紐づくKey Resultの「達成率」プロパティをロールアップし、平均値などを表示します。これにより、Objective全体の進捗を自動計算できます。ロールアップの設定で、対象リレーションを「Key Results」、プロパティを「達成率」、計算方法を「平均」とします。Key Result側の達成率は、個別の数値目標や完了タスク数などから算出します。
- 関連プロジェクト/タスク (Relation): その目標達成に貢献するプロジェクトやタスクのデータベースと連携させます。
- 最終更新日 (Last edited time): いつ進捗が更新されたかを確認できます。
具体的な設定手順と数式例
データベースの作成
新しいページに /database
と入力し、「インラインデータベース」または「フルページデータベース」を選択して作成します。データベース名を「チーム目標管理」などと設定します。
プロパティの設定
追加したデータベースに上記のプロパティを追加していきます。右上の「+」ボタンまたはヘッダー行の「+」をクリックし、プロパティの種類を選択して名前をつけます。
-
「達成率」プロパティの設定例(KPIの場合): プロパティタイプを「Formula」に設定します。 数式入力欄に以下のように入力します。
notion if(prop("目標値") > 0, format(round(prop("現在値") / prop("目標値") * 100)) + "%", "目標値を設定してください")
この数式は、「目標値」が0より大きい場合にのみ計算を行い、達成率をパーセンテージ表示します。0の場合はメッセージを表示します。round()
関数で小数点以下を四捨五入しています。 -
「OKR進捗率」プロパティの設定例(Objective側): プロパティタイプを「Rollup」に設定します。 設定画面で「Relation」には「Key Results」プロパティ(Key Resultに紐づくObjectiveを設定するために作成したリレーションの逆側)を選択します。 「Property」には、Key Result側の「達成率」プロパティを選択します。 「Calculate」は「Average (平均)」を選択します。
ビューの設定
データベースの左上にある「+ Add view」をクリックして、チームのニーズに合わせたビューを作成します。
- デフォルトビュー (Table): すべての目標を一覧で確認するのに便利です。特定のプロパティ(例: 目標値, 現在値, 達成率)を表示するように設定します。
- OKRビュー (Table): 「種別」が「OKR」の項目のみを表示するようにフィルターを設定します。ObjectiveとKey Resultを親子関係で表示するために、ObjectivesデータベースとKey Resultsデータベースを分ける、あるいは同じデータベース内で自己参照リレーションを使うなどの工夫も可能です。
- KPIビュー (Table): 「種別」が「KPI」の項目のみを表示するようにフィルターを設定します。
- 期間別ビュー (Timeline): 「期間」プロパティを使用して、目標の開始日と終了日をタイムライン形式で表示します。目標の全体的なスケジュール感を把握するのに役立ちます。
- ステータスボードビュー (Board): 「ステータス」プロパティを基準にボードビューを作成します。「未着手」「進行中」「達成」などのカラムで目標を整理し、ドラッグ&ドロップでステータスを更新できます。
- 担当者別ビュー (Table/Board): 「担当者」プロパティを基準にグループ化を設定します。
フィルターやソート機能を活用して、必要な情報のみを表示できるように各ビューを調整します。
他のデータベースとの連携
目標管理データベースと、チームが使用しているプロジェクト管理データベースやタスク管理データベースをリレーションプロパティで連携させます。
例えば、目標管理データベースに「関連プロジェクト」というリレーションプロパティを作成し、プロジェクト管理データベースに紐づけます。これにより、特定の目標にどのプロジェクトが貢献しているのかを明確にできます。
さらに、プロジェクト管理データベースに「関連タスク」リレーション(タスク管理データベースに紐づく)や「進捗率」プロパティ(タスクの完了状況から算出)がある場合、目標管理データベースからこれらの情報をロールアップして表示することも可能です。これにより、具体的な活動の進捗が目標達成にどの程度寄与しているかを把握しやすくなります。
チームでの運用ポイント
- 定期的なレビュー: 少なくとも週に一度はチームで目標管理データベースを確認し、進捗状況を共有し、必要に応じて目標や計画を調整する時間を設けることが重要です。
- 入力ルールの設定: 各プロパティ(特に現在値やステータス)を誰が、いつ、どのように更新するかのルールを明確にすることで、情報の正確性と鮮度を保ちます。
- テンプレートボタンの活用: 新しい目標やKey Resultを追加する際に必要なプロパティをあらかじめ設定したテンプレートボタンを作成しておくと、入力漏れを防ぎ、登録プロセスを効率化できます。
- アクセス権限: チームメンバーが適切に目標情報を参照・更新できるよう、ページのアクセス権限を設定します。
まとめ
Notionのデータベース機能は、チーム目標(OKR/KPI)の管理を効率化するための柔軟かつ強力な手段を提供します。この記事で紹介したデータベース設計、プロパティ設定、ビューの活用、他のデータベースとの連携、運用ポイントを実践することで、チームの目標設定から追跡、そして達成に至るまでのプロセスをよりスムーズに進めることが期待できます。
目標管理は単なるツール導入だけでなく、チームのコミュニケーションや振り返りの習慣と組み合わさることで最大の効果を発揮します。Notionを活用して、チーム全体の目標達成に向けた体制を強化されてはいかがでしょうか。